令和7年12月
AIが紡ぐ言葉と世界:生成AIと人間の共創
産業日本語研究会では、産業・科学技術情報の発信力強化や知的生産性の向上を通じて、わが国産業界全体の国際競争力強化に資するような、人間が理解しやすく機械が処理しやすい日本語(「産業日本語」)のあり方を研究しています。この「産業日本語」の研究は、明瞭な日本語文の作成、高品質な翻訳文の作成コスト低減などにつながるものです。
近年、学習したデータに基づいて文書や画像などを生成することができる生成AIが人間の作業を支援するツールとして活用されるとともに、課された課題を自律的に実行可能なAIエージェントなども登場しています。一方で、生成AIが運用する言語能力の不透明性や、生成AIの利用により地域に根差した文化等の理解が薄れて言語の均一化につながる危険性、他者権利侵害などのリスクも抱えています。
このような背景のもと、今回のシンポジウムでは、「AIが紡ぐ言葉と世界:生成AIと人間の共創」をテーマとし、生成AIの利用が加速する中で、生成AIの言語能力の分析や教育等への活用、AIエージェントへの応用や日本文化との関わり方、著作権との関係などの生成AIに関連した講演のほか、生成AI時代における大型辞書の役割や新聞と辞書の間の言葉のゆれの問題など、産業日本語の未来を考える上での最新の知見やトピックスを広くご紹介いただきます。
本シンポジウムが、産業日本語の更なる普及につながり、我が国産業に大いに貢献できる機会になることを期待しております。産業界、学術界などからの、多くの皆さまのシンポジウムへのご参加をお待ちしております。
■主催:
高度言語情報融合フォーラム(ALAGIN)、一般財団法人日本特許情報機構(Japio)
■後援(予定):
総務省、文部科学省、経済産業省、特許庁、
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所、
国立研究開発法人情報通信研究機構、独立行政法人工業所有権情報・研修館、
一般社団法人情報処理学会、一般社団法人人工知能学会、一般社団法人言語処理学会、
一般社団法人日本知的財産協会、一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会、
一般社団法人大学技術移転協議会、株式会社産業経済新聞社
■日時:
2026年2月5日(木) 13:00-17:55
■開催方法:
オンライン配信(zoomのウェビナー機能を使用予定です)
■テーマ:
AIが紡ぐ言葉と世界:生成AIと人間の共創
■参加費:
無料(事前登録制)
■事前申込先
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【オープニング】
(1)開会挨拶
| 井佐原 均 | 産業日本語研究会 世話人会 代表/追手門学院大学 シニア研究員 |
【第一部】
(2)招待講演
『プロフィシエンシー論から見た生成AIの日本語能力』
| 李 在鎬 | (早稲田大学大学院 日本語教育研究科 教授) |
生成AIの急速な台頭は、「ことばができるとは何か」という根本的な問いをあらためて投げかけている。従来、言語教育の領域ではことばの力を「プロフィシエンシー(Proficiency)」という概念で捉えてきた。これは、単なる知識や文法の正確さにとどまらず、実際の場面で言語をどのように運用できるかという総合的な能力を重視する考え方である。本講演では、このプロフィシエンシーの枠組みに基づき、生成AIの言語能力をどのように分析できるかを検討する。とりわけ、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルがどのような内部モデルに基づいて人間の言語使用に見られるプロフィシエンシーの差異を再現しているのかを考察する。こうした分析を通じて、教育的活用の可能性と限界を提示したい。
(3)招待講演
『AI時代における大型辞書の役割』
| 金水 敏 | (放送大学 大阪学習センター 所長/大阪大学 名誉教授) |
検索サイトがAIを取り入れるようになり、辞書を引くという作業がますます日常生活から遠くなりつつある。生成AIに自動的に辞書項目を作らせてみるという研究も行われており、家庭から国語辞典というものがなくなってしまう時代も目前かもしれない。そのような中で、日本唯一の大型国語辞書『日本国語大辞典』(日国)が果たすべき役割とはなんであろうか。小型〜中型辞典の役割が、語彙の規範を決めていくことにあるとすれば、大型辞典はその視野を時代、地域、位相等の観点から大きく広げて、日本語語彙が規範にたどり着くまでの背景を立体的に浮かび上がらせることにあるのかもしれない。そのような試みの一端をケーススタディを交えて示してみたい。
(4)招待講演
『言葉の「ゆれ」にどう向き合うか ――新聞と辞書の相互作用から考える』
| 関根 健一 | (日本新聞協会 用語専門委員) |
表記や意味、用法が変化していく中で生じる「ゆれ」に新聞はどう向き合っているか。不特定多数の多様な読者を想定して書く報道の文章にとって、「ゆれ」は誤解・誤読を引き起こす可能性がある。そこで新聞は対処のよりどころを辞書に求める。辞書は言葉に関する共通認識に基づいて一定の規範を示しているとみるからである。一方、辞書は掲載の可否や語釈の作成にあたって新聞での使い方、頻度を参考にする。記事には日本語の実態が映し出されていると考えるからであろう。新聞と辞書が互いの尾をのみ込んで一体化していくかのように「ゆれ」が定着していく過程を見ながら、分かりやすく正確に情報を伝えるための“正しさ”の在りかを考察する。
(10分間 休憩)15:05-15:15
【第二部】
(5)産業日本語研究会・活動報告
(5−1)分科会活動報告及び特許ライティングマニュアル紹介(各10分)
| 1. 産業日本語研究会・ライティング分科会活動 | (佐野 洋) | |
| 2. 産業日本語研究会・文書作成支援分科会活動 | (橋田 浩一) | |
| 3. 産業日本語研究会・特許文書分科会活動 | (谷川 英和) | |
| 4. 特許ライティングマニュアルの紹介 | (笠田 和宏) |
(5−2)1~4の活動報告及び紹介に対する質疑応答
参加者からの質問をチャットで受け付ける予定です。
(10分間 休憩)16:05-16:15
【第三部】
(6)パネルディスカッション
『AIが紡ぐ言葉と世界:生成AIと人間の共創』
(6−1)『パネル趣旨とパネリスト紹介』
| モデレータ 産業日本語研究会 世話人会 委員/国立国語研究所 教授 柏野 和佳子 |
(6−2)パネリスト講演1
『やりとりの力を鍛える会話AIエージェント』
| 松山 洋一 | (株式会社エキュメノポリス 代表取締役 CEO) |
生成AIは、リアリスティックな対面対話を通じて、人間のやりとりの力──対話能力や応答的適応力──を引き出す存在へと進化している。本講演では、産業現場で求められる日本語・英語スピーキング力を、AIとのインタラクションを通じて診断・育成する会話AIエージェント「LANGX(ラングエックス)」の活用事例を紹介する。会話AIの設計思想やマルチモーダル評価、教育効果、さらに現場実装に伴う技術的・ビジネス的課題にも触れながら、産業日本語教育における対話AIの活用可能性と、実社会での言語支援の新しいかたちを展望する。
(6−3)パネリスト講演2
『生成AIと「日本らしさ」について考える』
| 徳久 良子 | (愛知工業大学 情報科学部 情報科学科 教授) |
生成AIはひとつのモデルでさまざまな言語に対応できる一方で、それは逆に各地域に根ざした文化や慣習の理解が薄れ、均一化につながる危うさもはらんでいる。本講演では、この課題に向き合うために構築している、日本の地域特有の慣習や日常生活に関する知識を題材とした評価用データセットを紹介し、その過程で明らかになった知見を共有する。さらに、エージェントや音声対話への応用事例も取り上げ、生成AIと日本文化のより良い関わり方について展望する。
(6−4)パネリスト講演3
『生成AI時代の著作権リスク』
| 柿沼 太一 | (STORIA法律事務所 弁護士・弁理士) |
本講演では、パネルディスカッションの前提を共有する意味も込めて、LLM(大規模言語モデル)を用いた生成AIと著作権の関係性を整理する。特に、LLM利用における他者権利侵害リスク、法制度の現状・課題に焦点を当てる。また、LLM利用に際してのリスク回避策・対応方針を事例とともに示しながら、生成AIと人間の共創関係を法制度面から支える枠組みのヒントを提示する。
(6−5)討論
パネリスト間の討論に加えて、参加者からの質問をチャットで受け付ける予定です。
【クロージング】
(7)閉会挨拶
| 小林 明 | 日本特許情報機構 専務理事 |
■シンポジウム全般のお問い合わせ先
高度言語情報融合フォーラム(ALAGIN)内
産業日本語研究会シンポジウム事務局 担当 淺原
メールアドレス alagin-event@scat.or.jp
TEL 03-3351-8166
■事前申込締切 1月29日(木)
ご参加希望の方は、以下の「事前申し込み」をお早めに行ってください。定員(400名)になり次第、申込を締め切らせていただきます。
申込手続等についてご不明な点がございましたら、上記までにご連絡いただければ幸いです。
■事前申込先
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